研究概要 |
骨髄細胞を用いた肝再生医療を実現するためには,移植された骨髄細胞の効率の良い肝臓の集積と骨髄細胞由来の肝細胞の出現が重要である.本研究において我々は,骨髄細胞の細胞表面の糖鎖をシアリダーゼで処理することでガラクトースを表面に露出させる改変を行った.その結果,骨髄細胞をシアリダーゼで処理したところ細胞表面にガラクトースを露出させることが可能であることを,蛍光標識ガラクトース結合レクチンを用いたフローサイトメトリーで確認した.このシアリダーゼ処理骨髄細胞を培養ラット肝細胞と共培養したところこれらの骨髄細胞は,肝細胞のアシアロ糖タンパク質レセプターを介して高い効率で接着していることが明らかになった.さらにこれらの骨髄細胞をラットに尾静注したところ肝臓に高効率で集積させることが可能であることが明らかになった.このことから骨髄細胞をシアリダーゼで処理することで骨髄細胞表面にガラクトースを露出させることが可能になることが明らかになり,さらに尾静注でラットに投与することでこれらの骨髄細胞を肝臓に効率良く集積させることが可能になった.次にこれらの骨髄細胞をウィルソン病のモデルラットであるLECラットに投与することで,骨髄細胞による代謝性疾患の治療が可能になるか検討を行った.シアリダーゼ処理骨髄細胞をLECラットに投与して5ヶ月後にこれらのラットの肝臓の凍結切片を確認したところ,骨髄由来の遺伝子を持つ肝細胞のコロニーが多数存在していることが明らかになった.さらにこれらのコロニーについて遺伝子発現をRT-PCRで検討したところ,LECラットが欠損しているATP7Bを発現していることが明らかになった.また血液中のセルロプラスミンの活性を調べたところ通常のLECラットと比べて高い活性を持ったセルロプラスミンを分泌していることがわかった.以上のことから骨髄細胞をシアリダーゼ処理をすることで肝臓への集積を促進することが可能になり,さらに骨髄由来の遺伝子を持つ肝細胞を出現させ血中のセルロプラスミンの活性を改善させることに成功した.これらの骨髄細胞を用いた代謝性肝疾患の新たな治療法の開発が期待される.
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