研究概要 |
本年度はSHG顕微鏡を作製し,培養用コラーゲンゲルを観察する実験系を構築した.SHG顕微鏡の光源にはモード同期チタン・サファイアレーザーを用いた.レーザーから出射された超短パルス光はチョッパーで変調後に偏光子と1/4波長板で円偏光に変換し,対物レンズ(20x, NA=0.4)で試料に集光した.試料から発生したSHG光は共焦点配置のピンホールを通過後にハーモニックセパレーターで基本波から分離し,モノクロメーターで分光後に光電子増倍管でロックイン検出した.分離した基本波はフォトダイオードで同時検出した.ステージを移動させて試料を走査することによりSHG光および透過光の強度分布を取得した.観察試料にはヒト胎児肺由来の線維芽細胞を包埋培養したコラーゲンゲルを用いた.コラーゲンゲルは,酸性コラーゲン溶液,5倍濃縮培養液,再構成用緩衝液(50mM NaOH,0.26M NaHCO_3,0.2M HEPES),ウシ胎児血清を7:2:1:1の割合で混合した溶液に線維芽細胞を分散し,炭酸ガスインキュベーター内でゲル化させて作成した.検出光の波長は入射光の半波長となり,入射光強度に2乗に依存して検出光強度が変化したことから,コラーゲンゲルからSHG光が発生していることが確認できた.また,細胞の存在部位からはSHG光は検出されなかったので,SHG強度分布は透過像とよく対応していた.ゲルに包埋した直後の細胞は球形であるが,24時間培養後には伸長して線維芽細胞様の形態となる.この形態変化過程のゲルをSHG顕微鏡で観察したところ,包埋直後のゲルでは均一なSHG強度分布だったのに対し,24時間後のゲルでは細胞の周囲でSHG強度が高くなった.これは細胞が足場を作りゲルを再構築したためだと考えられる.これらの結果から本研究で開発したSHG顕微鏡が培養用コラーゲンゲルの非染色観察に有効であることが確認できた.
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