本研究の目的は、100ミクロンオーダーの空間分解能で形態情報を得ることができるMRI顕微鏡を用いることで、微細な構造を持つ神経線維束の結合情報を計測するシステムを開発することである。今年度は主にMRI顕微鏡用の拡散強調MR画像撮影プログラム(パルスシーケンス)の開発を行った。 1.拡散強調MR画像撮影用のパルスシーケンスプログラムの開発 標準的なスピンエコー法のパルスシーケンスを基にして、拡散を強調する磁場(拡散強調磁場こう配)を発生させるためのプログラムを加えることで、拡散強調MR画像撮影用のパルスシーケンスプログラムを作成した。臨床用MRIでの計測では磁場こう配を1回だけ印加して、印加しない場合との傾きから拡散強調の程度を求めているが、MRI顕微鏡を用いる場合では得られる信号が弱いため複数回の印加が必要となる。磁場こう配の強さ、印加時間と印加回数についてMRI顕微鏡の特性を考慮し、十分なS/N比が得られるようなデータ取得を行うパルスシーケンスプログラムを実現した。また1枚のスライスに対し、複数回磁場こう配を変化させて撮影を行うため、データ取得を終えるまでの時間が数倍に延びる。長時間にわたる撮影の影響を受けずに、安定したデータ取得が行えるような温度調整システムを導入し、その効果を確認した。 2.拡散テンソル画像計算 拡散テンソルを計算するためには、最低6枚の拡散強調画像を必要とする。拡散係数および拡散テンソルの固有値、固有ベクトルを算出するまでの一連の流れをソフトウェアで実現し、計算結果を表示可能にした。
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