近年、酸化ストレスが動脈硬化や心筋梗塞などの循環器疾患に関与する重要な因子であることが見出されて以来、活性酸素種に関する研究が脚光を浴びている。研究代表者は、活性酸素種の中でも医学的に重要な計測対象であるスーパーオキサイドに着目し、スーパーオキサイドと特異的に反応するスーパーオキサイド消去酵素(SOD)を微細な電極上へ固定化し、酵素反応により生じる電流量を高感度・高精度に計測するという全く新しい方法を着想し、スーパーオキサイドセンサの開発を行っている。本研究では、in vitro用のスーパーオキサイドセンサをin vivo計測用に発展させることを目的としているが、in vivoで長時間安定して計測できるセンサの開発には至っていない。本年度は、心臓の虚血再灌流障害におけるスーパーオキサイドの病態形成における役割を検討するため、心虚血再灌流時のスーパーオキサイド生成量の変化を、スーパーオキサイドセンサを用リアルタイムに測定した。ラット摘出心臓を用い、ランゲンドルフ外部灌流装置により虚血再灌流モデルを作成した。心臓設置部位の下流にスーパーオキサイドセンサを設置し、虚血前、虚血中、再灌流後の灌流液中のスーパーオキサイド濃度変化を電流値の変化を測定した。虚血前、虚血中の電流値は非常に小さかったが、再灌流後に電流値の増加が認められた。灌流液中にSODを溶解させた場合には、再灌流後の応答電流値の増加は認められなかった。以上のことから、虚血前、虚血中、再灌流後の灌流液中のスーパーオキサイド濃度変化を電流値の変化としてリアルタイムに測定できた。本スーパーオキサイドセンサを用いることで、従来の計測法では困難であったスーパーオキサイド濃度のリアルタイムモニタリングが可能となった。この方法を確立することで、虚血再灌流のみならず、様々な循環器疾患へのスーパーオキサイドの影響の解明へつながると考える。
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