研究概要 |
モデル高分子としてポリビニルアルコール(PVA)を用い、所定濃度のPVA水溶液を調整し、所定条件(圧力、時間)で圧力処理することで、高圧処理の構造化への効果について検討した。イオン交換水により調製した10w/v%PVA水溶液を10分間、10,000気圧で加圧処理した場合、透明な流動性の溶液から白濁した構造体が得られた。この構造体は凍結-解凍法で得られる成形体よりも短時間での調製が可能であり、純水中に浸漬しても安定な成形性を保持し、収率(ゲル化率)は90%以上であった。さらにPVA水溶液を5,10,15,20w/v%に調整し、10,000気圧における圧力処理時間の影響について検討した結果、短時間(1分程度)で処理前の透明な状態から白濁化が目視観察できた。さらに膨潤度の変化は、10分以上処理することで各濃度において一定の値を示し、処理時間5分における膨潤度は、ポリマー濃度に対して直線的に低下した。また構造体の内部をSEM観察した結果、数百nm程度の空隙(細孔)を持つ網目状の形成が観察された。PVA濃度が1w/v%未満では、10,000気圧において溶液の白濁が観察され、SEM観察および光散乱測定により200〜400nm程度の微粒子形成が確認された。さらに集合化メカニズムの評価のため、圧力処理における塩濃度効果について評価した結果、NaCl濃度が増加することで、低圧力側で構造体が形成され、9000気圧以上であれば、塩濃度に関係なくほぼ安定した膨潤度を示した。またPVAの分子量、けん化度および処理温度によっても構造化の条件が異なり、PVAの水素結合と疎水性相互作用の双方に基づく構造化が示唆された。
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