研究概要 |
今年度は,現在最も普及しているWindowsを搭載するコンピュータで解析可能な汎用性及び拡張性に優れたシステムを構築するため,現在開発中の解析ソフトウェアの改良を行い,購入した脳波計とノートパソコンを組み合わせて,携帯性の面でも優れた脳機能解析システムの開発を試みた.現時点では,脳波の時間波形,トポグラフィーの表示および同一環境における同一個人では脳波に再現性があることに着目して開発した手法である変化率二次元脳電図(deviation ratio topography : DRT)の解析表示が可能である. 脳活動をリアルタイムに解析することは,脳の経時的変化を知る上で非常に重要である.特に脳への血流を提供する頸動脈の血流遮断を伴う手術などでは,血流遮断時の脳機能をリアルタイムでモニタすることが重要となる.現在,脳の活動状態を知るために様々な手法が提案されており,よく知られている方法として,PETやfMRIなどがあるが,これらは特殊な施設でしか利用できず,たとえ,それらの機器を有していたとしても,これらの機器を利用して術中に脳の活動状態をリアルタイムでモニタすることは不可能である.この様な手術中の脳機能モニタとしては,脳波や大脳誘発電位が利用されることが多く,施設の設備に応じて術中の脳機能モニタリングが行われている.また,脳波検査が有用な臨床例としては,意識障害やてんかんなどが代表的であるが,なかでも,てんかん患者においては,脳波検査は不可欠なものとなっている.更に,脳の血流を一時的もしくは永久的に遮断しなければならない脳外科手術においては,脳の状態を逐次モニタすることが術後の後遺症を最小限に抑えるためにも重要である.今回開発した解析ソフトウェアを利用することにより,種々の環境において脳機能解析が可能となる.
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