研究概要 |
完全麻痺者のための歩行訓練システムは,歩行訓練中の下肢の状態を計測し,歩行改善に有用な情報を麻痺者に呈示して,歩行訓練をサポートするシステムである.本年度はセンサシステムと携帯型の表面電極式電気刺激装置の開発を並行して行った. センサシステムは,複数のジャイロスコープ(角速度計)と加速度計から構成される.また,センサ出力の評価のため3次元位置測定装置,ゴニオメータ(関節角度計),アルミ電極から構成される接地状態認識装置を用いた.3名の健常者においてアルミ板上での歩行実験を行い,各センサから得られたデータを解析した.その結果,ジャイロスコープ間の出力の差分により得られる関節角速度を数値積分することにより,膝と足関節の関節角度を正確に測定できることがわかった.また,加速度計や衝撃センサを用いることにより,立脚期と遊脚期の識別や,立脚期における足底の接地状態を認識することが可能性であり,床に非接触で安定して歩行期を識別できる小型センサを構築でき,それらセンサを用いることにより歩行能力を評価し,歩行訓練に有用な情報を訓練者に呈示できることが分かった. 携帯型の表面電極式電気刺激装置は,携帯性と安全性の観点から,定電圧式,振幅変調,陰性矩形波パルス,最大電圧100V,8ch,電池駆動とし,仕様作成と基本設計後,電子機器製作会社の「システム計測」に製作を依頼した.そして,その刺激装置を用い,健常者の下肢を対象にした刺激実験を行い,システムが正常に動作し,様々な刺激パラーメータの調整が可能であり,麻痺者の歩行訓練に用いることが可能であることを確認した.また,歩行訓練においてその刺激装置を動作させるプログラムを作成した.
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