本研究では商用周波電磁界の血管新生抑制並びに腫瘍成長抑制効果の有無を明らかにし、効果が認められる際にはそのメカニズムについて検討することを目的とする。固形腫瘍が成長するためには血管新生が必須であるが、生体内の反応、特に増殖を繰り返す腫瘍組織では様々な事象が複雑に絡んでいるため、素反応を解析することは難しいと考えられる。したがって本研究においてはまず血管新生のみに着目し、血管新生過程と電磁界暴露の関係について明らかにすることとした。 本研究ではDorsal Skinfold Chamber (DSC)という血管観察用の窓をマウスに装着し、そこに血管新生因子を混ぜたコラーゲンゲルを移植し血管新生因子による血管新生過程における電磁界の影響を定量的に検討した。本研究においては電磁界の影響を受けることのない樹脂素材で作られているチャンバーフレームを使用し研究をおこなった。 暴露する電磁界としては50ヘルツの超低周波で、磁束密度は最大3mTを使用し、15日間の亜慢性暴露とした。新生された血管は、FITC-デキストランを血管内に投与することで造影を行い、共焦点レーザー顕微鏡システムで画像を取得した。取得した画像から画像解析システムで、血管径、血管密度などを求め、電磁界暴露影響の有無を追求したが、本実験条件下では、電磁界による血管新生に差異はみられなかった。また、腫瘍をDSCに移植した腫瘍移植モデルについて同様の検討を行ったが、血管新生に差異は見られなかった。今後は、血管新生阻害剤などと電磁界との併用により阻害効果が促進されるか検討を行う予定である。
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