研究概要 |
今までに、SPring-8放射光を用いた高速高空間分解能CT(測定時間10分以内、1ピクセル=12ミクロン)を開発した。さらに本CTシステムを用いて、健常・喘息モデルマウスの直径100〜300ミクロンの末梢細気管支を軟組織の状態で可視化することに成功し、末梢細気管支に特化した局所コンプライアンスを定量化した。今までの方法は、安楽死したマウスを用いて実験を行っていたために、薬に対する反応を定量化することはできなかった。そこで今年度は、小動物を生きたまま観察できるようなCTシステムを新たに開発した。in vivo-CTを開発するには、スキャン中に生理的運動(心拍と呼吸)によるモーションアーチファクトをできるだけ軽減する必要ある。今回実験で用いたラット(SD,オス,10weeks)の場合、1分間に心拍が約300回、呼吸が約90回とヒトに比べてはるかに速い。動物の場合息を止めるなどの拘束条件には限界があるため、本研究では撮影を生理的運動と同期させることにした。まずは、気道内圧とECG値が一定値の間(呼気終了時、拡張期)に露光が行えるように検出器とX線シャッターを同期させた。回転ステージは連続的に回転を続け、サンプルが180度回転終了するまで上記の撮影シークエンス行い、約10分の回転スキャンで900枚程度の投影画像を取得できる。そのときの放射線量も0.8Gyと少ない。その結果、直径約300ミクロンの気管支は十分に観察できるようになった。その後、任意の呼吸圧に露光を行うようにすることによって、呼吸に伴う変形を撮影できる4次元CTを開発することに成功した。
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