研究概要 |
超音波診断装置から得られるエコー信号を用いて各種病変の定量診断を実現するための手法として,複数のデータにおいて特徴量解析を行った.既存の研究においては,使用データが非線形な信号処理の施された画像であったり,生体構造の認識が不可能なサンプルであることが多く,十分な精度での検討が行われていない.そこで本研究では,構造が機知であるファントム(擬似生体試料)や人体から摘出した肝臓の剖検試料を用い,診断装置で収集したRFエコー信号の振幅特性について,複数のパラメータを用いて解析を行うことで,生体組織構造とエコー信号の持つ特徴量の関係について詳細に検討した. 寒天溶液中にグラファイトを混入し,音速および減衰がヒトの肝臓に近似するように調整したファントムを作成した.ファントムを水槽中に固定し,超音波診断装置(東芝 アプリオ)で送受信周波数を2.0/4.0MHzに設定しRFエコーデータを収集した。ここで,装置の特性による深度方向の減衰が特徴量に与える影響,ファントム自体の持つ減衰定数による影響,組織中の音速変化による影響など,これまでに分離が困難であった診断装置内部の信号処理による特性変化と,組織自体の構造を反映した特性変化について詳細に解析し,実際の臨床診断で有効となる特徴量解析法とそのパラメータの決定法について検討した. ファントム実験の結果をふまえ,8例のヒト肝臓の剖検試料(肝硬変)をサンプルとし,各々の試料についてRFエコーデータを収集した。各々の試料について複数の特徴量解析を行った結果,壊死組織および正常組織の部位と線維組織の部位では明らかに信号の特徴が異なり,その変化率と病変の進行度との間に強い相関があることが確認できた.また,病変部位の特徴量変化を2次元のカラーマップとして表示することが可能となり,肝臓の組織変化に強く反応する特徴量や全体の構造を強く反映する特徴量などに分類できることが明らかとなった.
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