研究概要 |
本研究課題の目的は、拡散テンソルMRI画像において高精度に脳白質神経線維束を抽出し、その走行を解析し追跡する新しいアルゴリズムを開発することである。前年度までに、拡散テンソル楕円体形状に基づく脳白質線維束領域抽出手法、脳白質線維束走行解析手法を開発した。本年度は、前年度に行った予備実験結果に基づいて、脳白質線維束走行解析手法における線維束追跡アルゴリズムの改良を行った。また神経線維束と腫瘍の可視化手法の開発を行った。これらの手法を用いて、主な脳白質神経線維束である錐体路を対象として実験・解析を行い、本年度は以下の研究成果が得られた。 1.錐体路の全体像の描出。現在の拡散テンソルMRI画像において、神経線維束の分岐や交差による部分体積効果のため、従来手法では錐体路の全体像の描出が困難であることが知られている。提案手法を用いることで、健常者の拡散テンソルMRI画像において、手、足、顔の一次運動野の広い範囲から伸びる錐体路を描出することができた。提案手法によって推定された錐体路の経路は、神経解剖学的知識と矛盾しないことを示した。 2.従来手法との定性的な比較評価。従来手法[Basser and Pierpaoli, 1996]を実装し、健常者の拡散テンソルMRI画像において推定された錐体路の走行を、神経解剖学的知識に基づいて視覚評価を行った。従来手法に比べ提案手法では、他の神経線維束と交差する神経線維束、特に顔の連動野へ伸びる経路の描出に優れていることを示した。 3.提案手法の脳腫瘍患者データへの適用。提案手法を16例の脳腫瘍患者の拡散テンソルMRI画像に適用し、錐体路の走行を推定した。全例において神経解剖学的知識に大きく矛盾しないことを確認した。
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