研究概要 |
二年計画の一年目である本年度は,研究目的である脳動脈瘤の検出支援を行うための基本処理である脳血管領域の検出について検討を行った.従来から広く行われている領域拡張法(リージョングローイング)は,血管領域の判定基準が一定であることから濃度分布に違いが見られる太さが異なる血管領域全体を一様に抽出することは容易ではないという問題を持っている.この問題に対して,血管の分岐ごとに血管判定基準を動的に変化させながら領域拡張法を適用する,枝分かれリージョングローイングが提案された,そこで,この枝分かれリージョングローイングを実装し,頭部MRA画像に適用して,その性質を評価したところ,若干脳組織との分離がうまくいかない領域が観察されたものの,太さに関わらず血管領域全体を検出できるようになった.このことから血管径やその他の特徴を解析するための初期データとしては十分利用可能であるという知見が得られた. 一方で問題点も明らかになった.血管の構造解析を行うため,血管領域の芯線を検出し,血管の分岐部をノードとした構造記述を行う予定であった.血管における管状部分の芯線はヘシアン行列の適用により問題なく検出できるが,分岐部についてはノイズなどの影響により、実画像で安定に検出することは困難であることが分かった.このことから分岐部の検出については引き続き検討の上,解決手段を開発し,構造記述につなげる必要がある. さらに脳動脈瘤の球状や紡錘状といった形状特徴,血管の管状,分岐といった形状特徴のそれぞれの領域を排他的に表現できる尺度として,曲率の利用可能性について検討した.その結果,二つの主曲率の積(ガウス曲率)と平均(平均曲率)の符号判定に基づき,それぞれの領域を分離できる可能性を確認することができた.
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