本年度は、本システムの核となる技術である複眼画像からの3次元形状検出アルゴリズムの検討を行った。取得した複眼像から3次元画像を再構成する方法として、マルチベースラインステレオ法とベイズ推定による統計学的処理を用いた方法を検討した。マルチベースラインステレオ法は、水平に3台以上配置した等価なカメラより得た画像を用いて3次元距離計測を行う方法である。これは、異なる基線長のステレオ画像対について評価情報を足しあわせることにより、信頼性の高い対応点探索を行う手法である。各レンズの中心間の距離をBとし、各ユニットP0からPnで得た画像をImage0からImagenとする。焦点距離をF、3次元上の点Pまでの距離をZと仮定すれば、各ステレオ画像対Image0とImagenの対応点での視差dnは式(1)で表す事が出来る。dn=nBF/Z (1) Image0における3次元空間上での点Pに対応する座標を(x、y)とする。またImage0とImageiの対応点での輝度はf0(x、y)、fi(x+(i/n)dn、y)とする。このとき、非類似度の評価値として、各ステレオ対の非類似度を足し合わせた式(2)に示す SSSD(Sum of SSD)を用いる。評価尺度にSSSDを用いる事で最適な視差が決定できる。 SSSD(d)=Σ^^n__<i=1>SSD_i(d) (2) 開発したアルゴリズムを試作システムを用いて計測実験を行った。試料には鶏肉を用いた。鶏肉の中心はマイクロレンズアレイの先端から50mmの位置とした。また、大きさは50×70mmのものを使用した。鶏肉の中心を計測した結果、48.5333mmであった。 一方、ベイズ推定による統計学的処理による手法では、600×600画素に対する処理において、処理時間に2〜3分要し、誤差も大きかった。今後アルゴリズムの改良を加え、精度の向上および処理時間の短縮を行う。 また、3次元映像装置としてのインテグラルフォトグラフィの検討を行い、試作機を作成して、原理検証実験を行った。レンズアレイと液晶ディスプレイの位置合わせが正確に行われなかったため、立体像が不鮮明ではあったが、3次元映像を表示できることが確認できた。
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