血液製剤を介した肝炎ウイルス(HCV、HBV)やヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染が今もなお残されている。この問題を解決するために全く新しいウイルス検査法の開発を進めてきた。これまで模擬血清(ウシ血清に血液保存液を添加)試料中のDNAウイルスを対象に、独自に作製した導電性中空糸膜という分離膜を使って電気的に遺伝子分離を行った後、LAMP法と呼ばれる新たな遺伝子増幅法を利用して遺伝子増幅を行うことで、従来法よりも低濃度の試料からウイルスを検出でき、さらに検出時間の短縮も図れた。平成17年度は、この結果に基づき、同様にRNAウイルスに対する有効性について検討し、最終目的である臨床応用を目指した。 DNAとRNAでは、増幅用の酵素、プライマー、増幅反応などの様々な条件が異なる。そのため、新たなプライマーの設計、RNA増幅用酵素の選択、反応条件を検討した。次いで、導電性中空糸膜を使ってRNAを分離した後、RNAを増幅する最も一般的なRT-PCRによって増幅を行ったところ、これまでの検出感度が得られなかった。RNAはDNAに比べて不安定、かつ分解酵素(RNase)、アルカリ溶液によっても分解されることが知られている。そこで、導電性中空糸膜内に捕捉したウイルスの破壊法(従来のアルカリ溶液による破壊)の再検討、さらにその後に行われる遺伝子分離時の分解酵素の混入を抑制する必要があると考えられた。今現在も、これらの点について検討を進めている。また、導電性中空糸膜のウイルス捕捉率も検出感度に影響するため、適切な細孔径の選択が求められるが、細孔径を小さくすると目詰まりの発生も無視できなくなり、細孔径とウイルス捕捉率・目詰まり(扱うことのできる検体量)の関係も調べる必要があり、この点についても検討を行っている。
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