本研究は、従来にない高速・高感度・低コストのPET(陽電子放出型断層撮像法)装置を開発することを最終目標とし、それに関わる様々な要素技術を開発することを目的とする。以下に得られた成果を記す。 がん検診用PET装置(浜松ホトニクスを中心とした共同研究)として、体軸方向有効視野70cm(世界最大)という大型高速PET装置の開発を終え、既にがん検診に供している。この結果、全身スキャンのために必要な総ベッド移動量を抑えることに成功した。また、粗セプタ(我々が開発した遮蔽効果を弱めた特殊なセプタ)を導入し雑音成分を低減することに成功した。ただし、粗セプタを用いた新しい散乱補正法については、画質向上につなげるにはさらなる検討が必要なことがわかった。次に、高感度化と高分解能化を同時に可能とする深さ認識型(DOI)検出器の開発を進め、DOI検出器を実装したプロトタイプ次世代PET装置(放射線医学総合研究所を中心とした共同研究)の製作を終了し、装置全体の物理特性評価が可能な段階に至った。以上の装置開発に関連し、以下要素技術の開発を進めた。まず、装置物理特性評価に必要なモンテカルロシミュレーションプログラムの開発を行った。Geant4(高エネルギー物理学分野で開発されたプログラム)の活用を進め、新たに64ビット型計算機装置の導入とプログラム移植を済ませ、効率的な性能評価を可能とした。がん検診用PET装置やプロトタイプ次世代PET装置の性能評価を行い、新しい散乱補正法や次世代PET装置の感度特性の問題点などを明らかにした。次に、交付申請書に記した通り、被験者の動きを補正するための要素技術の検討にも着手した。独自の動き計測手法の考案と開発を進め、それに対応する新たな画像再構成法の検討も進めた。この結果、次世代PET装置における動き計測と補正が可能だという見通しがえられた(平成18年度科研費申請中)。
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