研究概要 |
臨床応用可能な診断治療用製剤および遺伝子導入用ベクターの開発を目的とし、ガス内封リポソームを調製し、超音波併用による遺伝子導入効率の上昇について検討を行った。 1)昨年に引き続きin vitroにおける遺伝子発現量の上昇を検討した。pDNAをカチオン性ポリマーと複合体を形成させたところ、単独で用いたときよりも発現量が低かったため、遺伝子は単独で用いることとした。種々の細胞において検討したところ、浮遊、接着いずれの細胞へも遺伝子導入可能であり、マウスおよびヒト由来癌細胞、血管内皮細胞において遺伝子発現量の著しい上昇が認められた。リポソーム構成脂質については、DSPCを基本組成としPEGを修飾したものにおいて最も高い発現量が得られた。 2)臨床用超音波診断機を用いてマウスの心臓・血管などの造影を試みた。しかし、小動物での明瞭な像を得るのは困難であったため、現在、超音波高解像度生物顕微鏡による造影を検討中である。 3)in vivoにおける遺伝子発現の検討を行った。マウス皮内投与において、in vitroと同様にPEG修飾リポソームにおいて最も高い発現を得た。超音波条件は、1MHzにおいて最も高い発現を示した。iv投与において、pDNAとバブルリポソームを投与後、直ちに肝臓または心臓に超音波(1MHz,1W/cm^2)を照射したところ、照射部位に限局した遺伝子発現が認められた。その発現量はバブルリポソームを用いない場合と比較して100倍から1000倍上昇していた。マウス腹水癌モデルにおいても、腹腔への超音波照射により腹水中の癌細胞へ効率よく遺伝子導入できた。 以上、バブルリポソームと超音波照射の併用により効率良く遺伝子導入できることが確認され、照射部位選択的な遺伝子導入が可能であることを確認した。本バブルリポソームは、簡便かつ低侵襲性な新しい遺伝子導入ツールとして期待している。
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