本研究の目標は、現行の歩行機能的電気刺激(FES)システムに免荷システムを併用した新しい歩行FESシステムの構築と適応範囲の拡大である。そのために、免荷システム系・測定系・刺激系・制御系を構築し、完全対麻痺者でその妥当性を検討した。 免荷システム系は吊り上げ装置とトレッドミルを使用した。歩行の妨げにならないように、吊り上げ用ベルトの形状を工夫した。測定系は、カメラを新規に購入し、3次元動作解析システムを免荷システムと併用できるように構築した。刺激系は下肢用FESシステムを構築し、制御系は起立制御中に刺激パラメータを容易に変更できるように、新たに制御用プログラムを構築した。 既にFESにより起立可能な完全対麻痺者でその妥当性を検討した。対象は、10年前に交通事故で脊髄損傷となり、8年前より埋め込み電極を用いたFES起立を継続している。免荷システムを用いて、吊るした状態にし、下肢へのFESによる体幹バランスへの影響を3次元動作解析により確認した。結果として、平行棒内では起立状態を維持している刺激パターンであったが、免荷システムを用いた場合、明らかなバランスの不均衡を容易に確認することが出来た。 従来の平行棒内でのFES制御中では上肢によりバランス制御を行っているため、フィードバック制御を行う場合は、上肢の影響が外乱として作用してしまい、十分なフィードバック制御が行えない。また、起立中に刺激パターンを変更することは、体幹バランスを崩す可能性が高く極めて危険であった。しかし、今回開発した免荷システムを用いれば、安全にフィードバック制御を行うことが可能になった。
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