研究概要 |
【目的】 本研究の目的は,脊髄損傷者の1日のエネルギー消費量推定法を確立し(平成16年度),日常生活における脊髄損傷者のエネルギーバランスの実態を解明するとともに(平成17年度),エネルギー消費量の自己管理を容易にする脊髄損傷者用簡易カロリー計を開発することである(平成18年度)。 【方法】 本年度は,酸素摂取法によるエネルギー消費量(酸素摂取法EE)を信頼基準として心拍数法EEと加速度法EEの脊髄損傷者への適用を検討した。脊髄損傷男性19名(年齢38±10歳,受傷後期間158±122カ月)を対象に,携帯型呼吸代謝装置(K4b2, COSMED社)と付属の心拍計,及び3次元加速度計(Micro Mini-Motionlogger, A.M.I.社)を用いて,安静時,日常活動時,運動負荷時の酸素摂取量(VO2),心拍数(HR),加速度比例積分値(PIM)を測定した。3次元加速度計は,胸部,腰部,両肘関節部,両手関節部,両足関節部,車いすの合計9箇所に装着した。日常活動時の測定は連続4時間実施した。 【結果】 安静時と運動負荷時のVO2とPIMにおいて,VO2と最も高い相関を示したPIMは,左足関節部(r=0.973±0.022)であった。日常活動時のEEは,信頼基準とした酸素摂取法EE(435±78kcal)と比較して,加速度法EE(430±79kcal)は有意差がなく,心拍数法EE(515±170kcal)は有意に高い値を示した(p<0.01)。相関分析の結果,酸素摂取法EEとより強い相関を示したのは加速度法EEであった(r=0.988)。 【考察】 本研究の結果,脊髄損傷者のEE推定には,心拍数法に比べ加速度法で精度の高いことが明らかとなった。VO2とPIMの相関から,全身が1つの物体として動く時の加速度を反映しやすい麻痺部や車いすに3次元加速度計を装着することが,有効であることが示唆された。
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