【方法】山形県立保健医療大学と米沢市が連携して行っている「いきいき健康大学」の参加者うち、65〜69歳(以下、高齢群)38名と、学生34名(以下、対照群、21.9±1.1歳)を対象とした。対象者には、座位にて文字解析装置(コードレスタブレットKW4620、グラフテック社製)上に専用スタイラスペンを用いて、一辺の長さが5cm(文字小)、10cm(文字大)の正方形状のマス内にひらがな「ん」の文字を任意の速度にて右手で書字を行わせた。座標データをもとに書字時間、筆跡距離、1コマ移動毎の文字接線速度を算出し、文字接線速度平均及び文字接線速度曲線グラフを作成した。文字接線速度曲線グラフから速度peak数をカウントした。統計処理は、Student's t-testを用い、有意水準5%とした。【結果と考察】文字小の書字時間は、対照群1.91±0.76sec、高齢群3.28±1.25sec(p<0.01)、文字大のそれは対照群2.31±0.82sec、高齢群3.47±1.27secであった(p<0.01)。文字小の軌跡距離は、対照群10.00±1.87cm、高齢群11.07±1.69cm(p<0.05)、文字大のそれは対照群23.22±5.12cm、高齢群22.90±2.80cm(N.S.)であった。文字小の接線速度平均は、対照群5.71±1.50sec、高齢群3.76±1.33sec(p<0.01)、文字大のそれは対照群10.40±2.60sec、高齢群7.33±2.47sec(p<0.01)であった。文字接線速度曲線の速度peak数は、対照群においては文字小、文字大ともに4個が58.8%を占めていた。それに対して高齢群でのpeak数は、文字小では6個以上が50%、文字大では4個が36.8%ついで6個以上が34.2%であった。接線速度曲線のpeak数の比較から、対照群では4個が50%以上を占め、3〜5個の間に拡大すると88%を占めていた。それに対して、高齢群においては6個以上の割合が多かった。「ん」の文字特性からpeak数は4個であることが予測される。これに対して、対照群においてほぼ予測どおりの結果が得られた。しかしながら、高齢群においては、peak数が多い傾向にあり、書字スピード調整能力が対照群より低下していることが推察された。
|