1.高齢者の上肢機能と書字能力の関係についての研究 山形県立保健医療大学と米沢市が連携して行っている「いきいき健康大学」の参加者の中から無作為に50名を抽出し対象者(73.9±6.0歳)とした。対象者には、一辺の長さが5cmの正方形状のマス内にひらがな「ん」の文字を任意の速度にて書字を行わせた。文字解析装置はサンプリング周波数80Hz、読み取り精度0.1mm、読み取り誤差0.25mmであり、書かれた文字は座標データとしてPCに取り込まれる。取り込まれた座標データをもとに書字時間、筆跡距離、1コマ移動毎の書字速度を算出し、書字速度曲線グラフを作成した。書字速度曲線グラフから速度ピーク数をカウントした。 上肢機能評価として、上肢挙上検査(手を肩から頭上に挙上し再度肩まで戻す動作を1回とし連続して10回反復運動)、回内外検査(回内90°から回外90°を1回とし連続10回反復運動)を行い、その際の所要時間を測定した。また、つまみ力測定器を用いて、手指ピンチ誤差総和値を測定した。その結果、書字時間は、3.8±1.8secであり、その時のピーク数は、3個が3名、4個10名、5個が11名、6個が8名、7個が4名、8個以上の者が14名であった。上肢運動機能である上肢挙上時間は5.5±1.5秒、回内外時間は4.8±0.9sec、ピンチ誤差総和値は6.7±2.4kgf・secであった。ピーク数と書字時間との間にはr=0.92、p<0.05の高い相関が認められ、それ以外の上肢挙上時間、回内外時間、ピンチ誤差総和値の間に相関関係は認められなかった。 2.健常成人の書字評価について 健常成人(学生ボランティア)30名に対して上記検査を同様に行った。現在解析中である。 3.書字障害者の書字評価について 脳血管障害者22名に対して上記検査を同様に行った。現在、書字速度曲線の速度ピーク数のカウント方法等について検討を重ねている。
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