研究概要 |
平成16年度の研究:(1)冠動脈バイパス術(CABG)後患者のインスリン感受性と運動耐容能の評価を行い、その関連について検討した。対象はCABG後患者5名である。グルコースクランプ法(DeFronzoら。Am J Physiol, 1979)の簡易法を用いてインスリン感受性を評価した。具体的には、一定量のインスリンを持続静注しながら、血糖値を100mg/dl前後に維持するために要するグルコース注入速度(GIR)を測定し、GIRを血糖値で補正した値(M値)をインスリン感受性の指,標とした。さらに心肺運動負荷試験を行ってpeakVO2、AT (anaerobic threshold)を測定し、運動耐容能の指標とした。結果は、M値とpeakVO2、ATとの間に有意な相関は認められなかった。(2)CABG後患者のインスリン抵抗性に関する諸指標の比較検討を行った。対象はCABG後患者8名である。グルコースクランプ法の簡易法を用いてインスリン感受性を評価した。同時期に75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の実施、HOMA-Rの算出、血中遊離脂肪酸(FEA)の測定を行った。結果は、M値とHOMA-R (r=-0.64)ならびにOGTTにおける120分のインスリン値IRI120 (r=-0.89)との間に負の相関が認められた。また、FFAとの間にも負の相関(r=-0.62)の傾向が認められた。以上の研究から、CABG後患者におけるインスリン感受性は正常者より低く、運動耐容能とも相関しないことが判明した。また、グルコースクランプ法で求めたインスリン感受性は、IRI120やHOMA-Rといったインスリン抵抗性諸指標と有意に関連することが判明した。平成17年度の研究予定:前年度の研究で得られた知見を踏まえ、CABG後患者を対象とした運動療法において対照群をおき、運動耐容能改善がインスリン感受性に及ぼす影響について検討を行う。
|