力の調節能力の評価法の開発のために、本研究では状況変化に合わせ力を適切に対応させる調節を、力の源である筋活動能力と遂行能力(パフォーマンス)を同時に見る方法とした。対象の状況変化を等速度にて直線的に増加する標的で表し、等尺性収縮にて力を出力しこの標的を追従することで、対象の状況変化に応じた調節を行うという単純化した実験課題を用いる。そのときの筋活動能力は表面筋電図法を用い計測し、力とS-EMGの振幅(包絡線)との関係を異なる出力率間で比較することでどのような関係にあるかを明らかにする。また、左右の上肢を比較することで利き手と非利き手の違いについて調べる。昨年度は、健常成人12名を被験者とし力の調節能力について、筋活動能力と遂行能力のデータを収集した。被験筋は左右の第一背側骨間筋とした。今年度は、本評価法の再現性を検証するために、昨年度の被験者の内8名に同じ条件で実験を行った。課題は、オシロスコープ上に提示された指標に沿い随意的に、2.5秒にて最大筋力の10%、20%、30%、40%、50%、60%の6段階の指標までおのおの直線的に力を発揮させた。その結果から、指標と発揮された力の誤差、S-EMGのフィルター処理および筋出力とS-EMG(包絡線)の散布図を書きその相関関係を分析し、昨年度の結果と比較検討した。1.遂行能力は、出力率による違いおよび左右差において1回目と2回目では能力差に違いがみられた。筋活動能力では2.力とS-EMGの散布図からその相関関係(回帰直線の傾き、相関係数)をみた場合では、傾きの変化は、右では1回目と2回目と同様な傾向を示したが、左では、1回目と2回目での傾きの変化が異なる傾向を示した。追従能力、筋活動能力ともに本方法では再現性は低い結果となった。したがって、被験者の数を増やす、課題提示の速度を変更し、評価として用いる条件を変えて検証をする必要性がある。
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