嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing ; VF)は、嚥下機能評価に用いられる検査法の一つであるが、これまで健常者における正面像の検討が十分になされてきたとは言い難い。平成16年度に健常成人を対象に40%バリウム5ml嚥下のVFを施行。正面像を検討し、食道入口部通過の左右差を反映していると考えられる「上部食道造影パターン分類」を考案し発表した。この分類は、VF正面像において、左右梨状窩より流出したバリウムが左右食道側壁に沿って流れるところに着目したもので、梨状窩通過直下での左右差より左(右)梨状窩のみ通過、左(右)梨状窩優位通過、両側梨状窩通過に大分類し、さらに上部食道内で左右に分かれて流れる造影剤の合流の有無から細分化し、合計13種類のパターンを定義した。本年度は、対象者の年齢を高齢者まで拡大させ、昨年度と合わせて167人のVFを施行。分類分布の男女差および年齢差を検討した。女性は両側:左側:右側=7:2:1で年齢によるパターン分布の差が認められなかった。一方男性は若年男性では女性と同様の分布であったが、年齢とともに左側に優位性のあるパターンに分類される割合が増加する傾向が認められ、高齢男性は両側:左側:右側=3:6:1であった。また食道入口部通過の左右差に影響を与える因子の検討を目的に、頭頚部の姿勢による影響、嚥下量による変化、カプセル嚥下の通過側などVFを用いて検討した。
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