研究概要 |
本年度は,まず過去に考案されたシステムが実際の導入に結びついていない要因を調査し,これを補える技術的要素がないか検討を行った.利用者側の視点では(1)導入初期費用が莫大(費用対効果が不明または見合わない),(2)プライバシーに対する不安(「見守られている」ではなく「見られている」という印象),(3)永続的に使うかわからない(早急に必要ではない,ゆえに導入されない),開発側の視点では(4)事例が少ないため研究開発が困難,(5)積極的な実験協力者が得られにくい,ということが考えられた.研究開発をスムーズに行うために現段階で解決すべき問題点は,(2)および(5)でないかと考えられた. これらを踏まえ,利用者が「容易に導入また撤去でき,内容を簡単・正確に知られて,各要素の設置可否を自身で決められる」システムを考案した.具体的には,各種センサユニットは計測データを無線伝送(微弱無線,アドホックネットワーク)するよう設計し,このユニットを利用者自信の手で,1つ1つの内容(何が調べられるのか,メリットは何か)を確認しながら指示書に従って置いていくモデルを考案した.ここでは家電製品の配線に触れるなど技術的な事項が一切無いよう配慮した.具体的にはテレビの利用状況を調査するユニットに電界強度計を応用することで,設置指示書は「テレビの上に置いて下さい」のみとした. 今年度は,在宅モニタリングで考えられる全てのセンサユニットの製造は行えなかったが,焦電・温度・加速度センサなど,いくつかの実装と評価を行った.また,平均年齢54.2歳の男女6名について設置評価実験を行った結果,97.4%のユニットが設置され,うち15%は我々の想定外の設置位置(主に高さ)であった.このような環境下で得られるデータの解析手法についても,今後検討をしていく予定である.
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