研究概要 |
廃用性筋萎縮の進行を予防するための運動療法手段を確立することを目的として,後肢懸垂前に実施したトレッドミル走行がラットヒラメ筋の廃用性筋萎縮の進行に及ぼす効果について検討した。 8週齢のWistar系雄ラット(18匹)を使用し,1)対照群(以下,CONT),2)後肢懸垂群(以下,HS),3)トレッドミル走行後に後肢懸垂群(以下,Ex-HS)の3群に分けた。実験終了後,ヒラメ筋を摘出し凍結固定した。横断切片を作成後,ミオシンATPase染色,アルカリフォスタファーゼ染色を施し,線維タイプごとの線維直径,線維タイプ構成比率,毛細血管/筋線維(C/F)比を計測した。また,プロテインアッセイ法により単位タンパク質量を吸光度計にて測定した。 その結果,1)線維直径:CONTと比較し,HSとEx-HSはType I,II線維ともに有意に減少したが,Type I線維はEx-HSがHSよりも有意に大きかった。2)線維タイプ構成比率:CONTと比較し,HSだけType IIの比率が有意に増加していた。3)C/F比:CONTと比較し,HSだけが有意な減少を示した。4)タンパク質量:HSはCONTの53.5%になり,有意に減少を示した。しかし,Ex-HSはCONTの81.3%となり,HSと比較して有意に高値に示した。 本研究の結果から,安静臥床前に運動負荷を行うことでType I線維の萎縮進行と速筋化が抑制されており,さらにはC/F比,単位筋原線維タンパク含有量の減少も抑制されていた。従って,運動負荷が廃用性筋萎縮の進行を予防した可能性があることが示唆された。今後の課題としては,さらに多角的分野から萎縮予防メカニズムを解明していくことで,効果的な廃用性筋萎縮の予防手段を検討していくことが必要であると考える。
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