研究概要 |
本研究は変形性股関節症患者の股関節外転筋群の筋の質的トレーニングとして固有受容器性神経筋促通手技(Proprioceptive neuromuscular facilitation :以下PNF)の有効性について表面筋電図(以下EMG)解析(積分筋電図解析およびwavelet周波数解析)を用いて検討したものである.対象は変形性股関節症患者17症例であった.方法は徒手抵抗を用いた股関節前額面での等張性収縮運動施行者10症例(以下,従来群)とPNFの下肢の伸展-外転-内旋パターン(膝関節は伸展位で固定)を用いた対角線上におけるらせん運動施行者13症例(以下,PNF群)の2群に分けた.運動時間はそれぞれ15分間とし,トレーニング前後における最大外転筋力と中殿筋と大殿筋と筋膜張筋のEMGを計測した.その結果,PNFを用いた運動は単一平面上での等張性運動と比較し,(1)外転筋力の増加,(2)中殿筋EMGの平均周波数の上昇,(3)大殿筋EMGの積分筋電値の増加,(4)股関節外転筋群(中殿筋,大殿筋)の協調性の改善に有効である結果を得た.以上のことから,PNFを用いた運動は,中殿筋のtypeII線維の選択的なトレーニング及び,歩行時立脚期の中殿筋と大殿筋の協調性改善を目的としたトレーニングとして有効であると考えられた.また,本研究は運動前後における筋の出力特性と筋活動特性の違いについて検討したものであるが,今後は長期的なトレーニングを継続した場合の効果についても検討していく必要性がある.
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