研究概要 |
本研究は変形性股関節症患者の股関節外転筋群の筋の質的トレーニングとして固有受容器性神経筋促通手技(Proprioceptive neuromuscular facilitation:以下PNF)の有効性について表面筋電図(以下EMG)解析(積分筋電図解析およびwavelet周波数解析)を用いて検討したものである.対象は変形性股関節症患者20症例及びコントロール群として健常者30症例であった.方法は変形性股関節症患者20症例に対し,徒手抵抗を用いた股関節前額面での等張性収縮運動施行者10症例(以下,従来群)とPNFの下肢の伸展-外転-内旋パターン(膝関節は伸展位で固定)を用いた対角線上におけるらせん運動施行者10症例(以下,PNF群)の2群に分けた.運動時間はそれぞれ15分間とし,トレーニング前後における最大外転筋力と中殿筋と大殿筋と筋膜張筋のEMGを計測した.その結果,治療後PNF群で有意な筋力の向上と歩行時の筋活動の上昇が認められた.また,本年度は三次元動作解析装置とは別に上部体幹と下部体幹に2軸角速度センサーを貼付し,歩行時の筋活動の質に加え,動きのなめらかさを定量化することを試みた.その結果,水平面状における身体の捻れの評価は3次元動作解析装置で計測するのと同等の評価が可能であることが示され,臨床での簡易評価法としての有効性が示唆された. 註:(動きのなめらかさとは)角速度センサーを第9胸椎と第2仙骨部に添付し,歩行時の上部体幹の回旋角度と下部体幹の回旋角度の位相を計測する.歩容の「なめらか」な健常者では,この位相に肩甲帯回旋角度の位相は,半周期分ずれて出現する.この位相差を定量化することで「なめらかさ」の評価を行う.
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