本研究では、人工喉頭への自然なイントネーションの半自動付加や失語治療への訓練方法に役立てることを目的に、音声の自然性や発話にイントネーションや発話のタイミングが与える役割を調べている。 本年度は指圧でのイントネーション制御に着目し、前年度の結果を受けて、特に発せられた音声の自然性を向上させるための基本的な要素は何かということについて検討した。 まず、実験システムを見直し、指圧力から音声基本周波数への変換関数等をコンピュータで簡単に変更でき、実時間処理で圧力から音声基本周波数への変換ができる装置を構築した。また、指圧のセンサも作り直した。この装置を用いて、変換関数のおおよその値を見つけ出した。また、音声基本周波数の変動のしやすさが音声の自然性に影響を与えていることが示唆されたため、変動を抑えるための一次ローパスフィルタを導入し、遮断周波数を変えた時の音声の自然性への影響について検討した。その結果、変動を抑えた遮断周波数0.5Hz程度の値で比較的自然性が高かった。しかしながら、被験者から"大きな差は感じられなかった"との内観報告も得た。一種類の制御入力手段で自然性を向上させるのは問題があり、音声基本周波数生成モデルのひとつであるアクセント指令・フレーズ指令モデルを考慮した制御方法との比較検討が必要であると感じている。現在、このモデルを参考にした制御装置の製作を始めている。 また、上記研究のための聴力検査用の機材や装置製作用の工作機、力覚センサやシステム構築用のA/D変換デバイスなどをそろえた。また、学会参加や研究室の訪問を行い、イントネーションや発話タイミングに関連する資料の収集や意見交換を行った。
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