本研究は、本年度から3年間に亘り、本研究者がこれまで継続的に研究してきた性別に過度にとらわれない体育授業の在り方についての理論を授業実践に移すことを目的としている。 本年度は、以下の通りに研究を進めた。 1.本研究に関連する国内外の文献を収集した。 2.中学校の体育授業を複数校・複数の運動領域で観察し、記録を行った。 3.体育授業を担当している複数の教員から聞き取りを行った。 本年度実施した文献研究や授業観察、現場の教員からの聞き取りから、次の知見が得られた。 本年度観察した授業においては、クラス人数の男女比及びグループ人数の男女比により、生徒の活動に明らかな差が見られた。一般的に男女共習の授業では女子の消極性が認められるが、女子の人数が男子の人数を大きく上回るクラスでは、女子の積極性が増していた一方、男子に消極性は認められなかった。また、グループ活動を行う際にも、グループ構成において女子の人数が男子の人数を上回ると女子がかなり主体的に活動している様子が窺われた。他方、特に球技領域のグループ活動時において、男女の技能差が著しい場合、男女がお互いに遠慮する場面も見られた。しかし、教員からの聞き取りや観察結果から、男女の運動経験差を縮めることで解消できる部分も少なくなかった。 以上から、クラス内やグループ内での男女の人数比を考慮し、運動領域によっては男女の運動経験差を埋める工夫をすることが、性別に過度にとらわれない授業実践へとつながるのではないかと考えられた。
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