研究概要 |
寝返りを始めるまでの乳児は,覚醒時に仰向けに寝た状態で,四肢を含む全身の運動を数秒から数分にわたって行う.これは一見して規則性をつかみにくい複雑な運動でGeneral Movement(GM)と呼ばれ,臨床的な重要性が指摘されている.乳児の全身の動きは,乳児の脳神経学的な状態を知る窓口になり,その後の発達のリスクを把握することが可能だという.本年は,これまでの期間に自発運動の2次元計測を行ったlow-risk早期産児のフォローアップデータを収集し,乳児期初期におけるabnorma1なGMパターンと,1歳半〜3歳児時点での発達予後との関係を検討した.その結果,GMs評価は3歳時点での診断との間に高い陰性予測値を示し,フォローアップ対象となる乳児のスクリーニングテストとしては,非常に意義のある評価法であることが示唆された. さらに本年度は,GM評価と脳神経学的な発達過程との関係を調べるための基礎調査として,リーチングなどの能動的運動表出場面における全身の動かし方,および脳内活動パターンの変化を比較検討した.乳児を対象に,到達運動誘発場面における前頭部の脳内ヘモグロビン動態の計測を行ったところ,到達運動が実際に表出されるよりも前の時期にヘモグロビン動態の変化のピークが認められた.髄鞘化という観点からは未成熟であると考えられていた乳児期前期であっても,機能的にはすでに活動が見られることが示唆された.今後GM評価との関係を検討し,乳児の動きに関する脳神経学的な発達過程のモデルを検計するため.非常に意義のある研究結果が得られた.
|