研究概要 |
平成16年度は,体育授業と学級経営の関係性を把握するため,東北および関東圏内の小学校児童約1,000名を対象に調査研究を実施した.調査には,高橋ら(1995)が開発した「体育授業態度評価票」と日野ら(2000)が開発した「学級集団意識調査票」を適用し,これらの回答から体育授業と学級経営の関係を明らかにしようとした.調査対象は教師や学校・学級の属性にかかわらずランダムに選定した.なお本研究では,学級集団意識調査票の回答による子どもの学級集団に対する意識を学級経営の実態を示す指標としてとらえた. 分析の結果,1学期段階における体育授業態度評価と学級集団意識調査の得点の相関値は両者の「総合評価」間で.555であり,中程度の有意な相関関係が認められた.2学期段階におけるこの値は.547であった.このことから,(1)一般的なクラスにおける体育授業と学級経営の間には中程度の有意な相関関係があること,(2)その関係は,学期間を通じて大きな変容が見られないことなどが結果として明らかになった. しかし一方で,「体育授業を見れば学級経営の様子がよくわかる」「体育授業を中心に学級経営を展開する」といった学校現場から聞かれる経験的な仮説の信頼性妥当性を確かめるため,体育授業を中心に学級経営をしている2学級を意図的に抽出して事例的に同様の調査を実施することにした.その結果,両者の関係は学期の進行あるいは単元の進行とともに強くなる傾向が認められ,なかでも体育授業で「できる」ようになることと学級集団での「人間関係」が,一般的なクラスに比較して強く影響し合っている事実が確かめられた. 現在は,3学期段階での関係性を調査分析中である.次年度も,同様の調査を実施するとともに,特に「技能的な成果の保障と子どもどうしの人間関係を肯定的にすることを視野に入れた実験的実践」を行い,体育授業が学級経営に対して具体的にどのように貢献するのか,さらに具体的に検討する予定である.
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