プロサッカークラブの企業統治を考えるために、まず2004年には英国のフットボールクラブのコーポレートガバナンスを研究するロンドン大学バークベック校を訪問し、一連の研究報告書を入手、内容の検討を実施した。いっぽうで、我が国のプロサッカークラブ(Jクラブ)のコーポレートガバナンスの形態を4種類に分類し、日本スポーツ産業学会では、本研究の展望についてディスカッションをおこなった。 次に、株主のヒアリング調査を準備するとともに、最大のステークホルダーである「顧客」、サポーターと呼ばれる観戦を繰り返す消費者のクラブ経営に関する意識調査を(社)日本プロサッカーリーグの協力で行った。調査は2004年度に開催されたJリーグ第2ステージにおいて東海地区3クラブ(名古屋グランパスエイト、ジュビロ磐田、清水エスパルス)の試合会場にて実施された。本調査結果は、2005年9月に開催される第13回ヨーロッパスポーツマネジメント学会にて発表予定である。 また自治体主導型のガバナンスの事例である(株)大分フットボールクラブの社長、サポーター持株会が筆頭株主であり、また(株)北海道フットボールクラブの次期社長を選出するサポーター持株会の理事長、副理事長にヒアリング調査を実施した。大分県や札幌市のように自治体が公的資金で協賛や、株式に出資するなどして経営に影響を及ぼし、また人的資源、スタジアムなどの物的資源での支援を実施するなど、地方都市のクラブ経営が行政による社会政策に位置づけられていることが明らかになった。2005年度は東京、大阪、名古屋などの大企業がプロクラブの株主であり、さらに強力な協賛企業でもあるクラブに対するヒアリング調査および、全クラブに対する質問紙調査を実施する予定である。 最後に英国プロクラブ経営の近年の流れであるサポーターズトラストの動向をおさえるために、サポーターズ・ダイレクト事務局長にヒアリング調査を実施し、関連資料を収集した。本資料は邦訳され、スポーツ・体育関連の雑誌に投稿予定である。
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