研究課題
本年度は、19世紀の急進主義者の文化に対する態度に注目した20世紀のニュー・レフトのスポーツ理解について報告を行った。具体的には7月にシドニーで開催の第20回CISH国際歴史学会(於 ニューサウスウェールズ大学)にて、表題"A Political Analysis of the Historical Development of Sports Writing in Britain from the Early Radicals to the New Left".の発表を行った。以下はその要旨である。英国19世紀初頭のスポーツについて言及した20世紀の研究者の多くは、19世紀の急進主義研究を手がける者が多く、後に彼らは文化研究と社会主義の接合理念から労働運動や社会史研究をてがける学術集団を派生させた。特に歴史領域にかかわったE.P.トムソンの著作は、社会史研究の中でもレジャーやスポーツへ視点を与えることの重要性を説き、トムソンの影響下、R.W.マーカムソンが民衆スポーツについて力作を展開した他、彼がトムソン指導下で論文をてがけた英国ウォーリック大学社会史研究所では、トムソンの後任として着任のトニー・メイソンがレジャー史を超え、より具体的にスポーツ史という分野そのものの開拓に貢献、英国スポーツ史学会の発足にも影響を及ぼした。昨今までにメイソンの果たした功績は、学術刊行物The Sports Historianにも記載され、R.ホルトらがその執筆を担当した。メイソンは新左翼とは一線を画す新しい時代の研究者であるが、彼流のスポーツ史研究の土壌がトムソン以後の社会史研究の伝統とかかわりを持ったことは否定できない。またウィリアム・コベットのスポーツ熱についてG.D.H.コールといった20世紀の新左翼が言及していることも、本研究の主張を裏づけるケーススタディに相当している。本論文は、トニー・メイソンとじかに連絡をとりつつ完成させた。
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第20回CISH国際歴史学会セクション25. Sport, Politics and Businessにおける学会発表(Sydney, Australia, July 2005) (CD-ROMとして刊行予定)