本研究の目的は、(1)地域スポーツの振興とまちづくりの関係性にみられる現象やその様相を、社会的インパクトという視点から実態的に捉え、解明し、評価する、(2)地域におけるスポーツ振興と協働型まちづくりを連動させる中間組織が地域内のソーシャル・キャピタルを活用し、新しい社会的価値を創造する様相とそれにともなう社会的変容を捉える、(3)持続可能なまちづくりを進めるためにスポーツ振興による協働型まちづくりモデルとシステムを提案し、社会実験を行うといった3つの研究課題を達成することにある。本年度は、自治体対象の調査を実施する予定であったが、市町村合併を控える自治体が多数あるため、現状だけでなく、将来を見据えた確かなデータ確保が困難だと判断し、次年度に繰り越し、本年度は、次年度のケーススタディを先行して実施した。具体的には、スポーツ組織と商店街組合が共同事業をしている事例や行政と市民の橋渡し役として機能しているNPO法人の事例、またスポーツ組織の事業にかかわる人的エネルギーに対する手当を、法定通貨ではなく、地域通貨によって地域産業の活性化やまちづくりを試みている事例、スポーツに特化したまちづくりをめざして、NPOと行政が連動し、まちのイメージづくりやコミュニティビジネスによる産業化と地域活性化を図ろうとしている事例、またスポーツ政策を地域に浸透させようとする都道府県レベルの行政機関が手掛ける事業や仕掛けに地域間格差が生じる原因を探るために、総合型地域スポーツクラブの創設・育成が振興している自治体と、そうでない自治体との比較などを行った。ケーススタディから明らかになったことは、「問題認識」「革新的エネルギー」「巻き込みと連動」「システムの確立」ということがわかった。次年度以降は、これを一般化につなげたい。
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