研究概要 |
骨梁のネットワーク構造は不活動の影響を受けて劇的に変化する。坐骨神経の切除及び凍結麻痺によって下肢を不活動にした脛骨骨梁の形態的特徴について、骨梁の狭小化や断片化に着目してその経時的変化を検討した。 Fischer344系雌性ラットを用い、左坐骨神経の切除(CN)及び凍結麻痺(NF)を10週齢時に行った。その後1日後並びに1,2,3,4,5週間後に両側の脛骨を採取した。染色された脛骨近位端の縦断面をデジタル顕微鏡にて観察、撮影し、画像解析ソフトにて骨梁形態を解析した。 神経切除(SN)及び神経凍結(NF)による二次海綿骨骨梁骨の形態的変化は、術後1-2週目までに始まり、骨梁骨面積(BA)は有意に少した。SNの場合と比較してNFでは、術後初期(2週目まで)の骨梁骨面積の低下程度は緩やかであった。3週目にはSNもNFも共に同レベルのBAを示し、SNは3週目以降変化はなかったが、NFでは4週目から漸増を呈し、5週目には70%レベルまで有意に回復した。また骨梁構造解析の結果、健常側に対しNFでは、骨梁骨の長さ及び幅が1週目から有意に低下した。4週目以降は骨梁幅および骨梁数が増加し、特に骨梁幅は5週目にはOhのレベルまで回復した。骨梁長は1週目以降健常側より有意に小さく、4週目以降も変化が見られなかった。 以上の結果より、術後初期の骨量減少程度は、神経凍結の場合、神経切除と比較して反応性は低いものと思われる。SNはNFよりも吸収系の亢進が強く、骨量減少に影響したのではないかと考えられる。またNFによる再神経支配による骨量回復過程の観察では、骨量の回復増加と一致して骨梁幅が増加し、長さに変化がなかったことから、4週目以降の骨量回復に骨量幅の増大が貢献していることが明らかとなった。不活動からの回復過程において、骨梁幅における構造的可塑性が示唆された。
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