本年度は、カルニチン投与が生体におよぼす効果を明確にするため、先天的なカルニチン欠乏症により脂質代謝によるエネルギー産生に支障をきたすモデル動物、juvenile visceral steatosis(JVS)マウスを用いて、その代謝機構の検討を行った。結果は以下に示すとおりである。 (1)24時間の絶食によって低下を示したJVSマウスの自発行動量と体重あたりの酸素摂取量は、カルニチンの腹腔内1回投与によって改善され、その効果は少なくとも投与後2日間にわたり続いた。カルニチン投与後の呼吸商は脂質依存性を示した。 (2)24時間絶食後の再摂食量が拒食となったJVSマウスにカルニチンの腹腔内1回投与を行うと、再摂食量は過食となり、投与後72時間においてもその効果が認められた。 (3)投与されたカルニチンは血中、および肝臓においてはヘテロ接合体のレベルにまで達する顕著な取り込みが認められた。しかしながら投与12時間後では元の低いレベルに復していた。一方、心臓、骨格筋、精巣におけるカルニチンの取り込みは極わずかであり、脳への取り込みは認められなかった。 (4)脂質代謝に関連する血中パラメーターの遊離脂肪酸、ケトン体は肝臓のカルニチンレベルに相応するようにそれぞれ低下、上昇を示したが、いずれもカルニチン投与12時間後には元のレベルに復していた。肝臓総脂質量は低下を示した後、カルニチンレベルに相応するように元のレベルに復していた。 (5)呼気ガス分析および尿中排出窒素量よりカルニチン投与2日後のエネルギー消費を検討したところ、その主なエネルギー源は脂質であった。 (6)同様に、カルニチン投与2日後にマウス尾静脈より^<14>Cラベルを行ったパルミチン酸を投与したところ、呼気中より野生型マウス絶食レベルの放射活性が測定された。 (1)〜(6)により、カルニチンレベルが低いにも関わらず、脂肪酸代謝は改善されていると考察される。
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