カルニチンは脂肪代謝のコファクターとして機能する。カルニチン欠損、juvenile visceral steatosis(jvs^<-/->マウスは、絶食下になると暗期の自発行動(locomotor activity; LA)が減少することを見出した。LA低下の機構を明らかにする過程で、長鎖脂肪酸からのエネルギー産生関与の他、今年度新たに覚醒状況と関連のあるorexin神経活動との関係を見出したので報告する。 (1)カルニチン欠乏jvs^<-/->マウスは絶食下になると、暗期の活動時期におけるLAは低下した。 (2)絶食下において低下を示したjvs^<-/->マウスの暗期のLAは、カルニチンの腹腔内投与により野生型(jvs^<+/+>)マウスと差のないレベルにまで回復した。 (3)絶食jvs^<-/->マウスの低下した体温(23時)は、カルニチン腹腔内投与、ショ糖および中鎖脂肪酸の経口投与によりそれぞれ回復した。体温と暗期3時間LAとの間には弱い相関が認められた。 (4)中枢神経興奮剤であるmodafinilを18:00に絶食jvs^<-/->マウスの腹腔内に投与したところ、低下した暗期のLAは有意に回復を示した。すなわち、jvs^<-/->マウスのLA低下は、エネルギー不足によるものでだけはない。 (5)絶食により低下したjvs^<-/->マウスの視床下部外側野におけるc-Fosポジティブなorexin神経細胞の割合は、カルニチンの腹腔内投与により摂食時のレベルまで回復した。暗期3時間LAとc-Fosポジティブなorexin神経細胞の割合とは、高い相関(r=0.90)を示した。また絶食jvs^<-/->マウスの脳脊髄液中のorexin Aレベルは、絶食jvs^<+/+>マウスのレベルと比較して有意に低下を示した。 以上の結果は、脂肪酸酸化障害におけるLA減少は、orexin神経活動の低下が関与することを示す。
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