研究概要 |
カルニチン欠損、juvenile visceral steatosis(jvs^<-/->)マウスでは、絶食下において自発行動量および体重あたりの酸素摂取量が低下することを見出した。その機序を検討したところ、エネルギー消費の低下を原因とする一方、中枢神経系において行動を掌るオレキシン神経活動の抑制を認めた。いずれも、カルニチン投与によって摂食下のレベルにまで回復したが、本年度はとくに長鎖脂肪酸酸化の面から検討を加えた。 マウスのin vivoにおける長鎖脂肪酸酸化能を検討するため、各種条件下において[1-^<14>C]-パルミチン酸を尾静脈投与し、呼気中に排出される^<14>C-CO_2を測定した。投与後30分間に呼気中より^<14>C-CO_2として回収された割合を長鎖脂肪酸酸化能(%)として示すと、摂食jvs^<+/+>マウスの酸化能と比較して、36時間絶食jvs^<+/+>マウスの酸化能は著しい高値を示した。一方、60時間絶食jvs^<-/->マウスの長鎖脂肪酸酸化能は、36時間絶食jvs^<+/+>マウスの酸化能と比較して有意に低値を示した。絶食24時間時にカルニチン腹腔内1回投与を行った60時間絶食jvs^<-/->マウスの長鎖脂肪酸酸化能は、血中や組織のカルニチンレベルは投与12時間後にすでに元の低いレベルに復しているにも関わらず、60時間絶食jvs^<-/->対照マウスの3倍に近い、絶食36時間jvs^<+/+>マウスの酸化能にほぼ相当する高いレベルを示した。すなわち,カルニチン投与によって示された持続的投与効果は、一つには血中や組織でのカルニチンレベルが低いにも関わらず、長鎖脂肪酸酸化が改善されたことによるものである。 持久的な運動時と同様に、糖からのエネルギーを消費し尽くし、脂肪からのエネルギーに頼らざるを得ない状況を絶食により条件付けると、カルニチンの1回投与はjvs^<-/->マウスの長鎖脂肪酸酸化を持続的に活性化し、エネルギー産生を増加させることが明らかになった。しかしながら、その調節においてカルニチンはrate-limitingになっていなかった。
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