テニスにおける調整力トレーニングのあり方を論じていくためには、まず、国内外の選手が身につけている動き(技術)を発育発達段階に沿って体系的に明らかにしていくことが役立つと考えられる。このことによって、発育段階や競技レベルに即してトレーニング法(目標、手段、計画、測定評価など)を構築していく際の基礎的知見が得られるからである。なおこの課題は、実際の試合で見られる動き(技術)を分析することから始めている。 このうち現時点では、世界レベルと日本レベルに分け、実際の試合でみられるショットの種類と頻度について分析し、日本選手のトレーニング目標となるテニスの技術について検討を行っている段階である。まず女子選手を対象に日本のトップジュニアから世界のトップジュニアさらに、ジュニアでありながら世界のトップ10にランクインしている選手を比較した結果、サービスのコーナーへの打ち分け、ラリーのセンターからの打ち分けに有意差が認められた。これと平行して、今後は女子選手だけではなく男子選手、ジュニアからトッププロとデータの数を増やし、プレースタイルの変遷や、今後のあるべきプレースタイルを示唆していく必要があるため、データ分析のスピード化が要求される。そのために、データ分析のソフトを開発し、データ処理を迅速に進めていく必要があるだろう。このソフトに関しては、専門家に依頼している段階である。また、発育発達という観点からテニスをみるために、年齢別に段階的に分類した試合を分析していかなくてはならない。従って、各年代で行われる大会(夏期の全日本ジュニア選手権大会など)に出向き、ジュニア選手の試合をビデオ収録することで、データを収集していくことも必要である。ただ、今回科研費採択が追加であったため、夏期の主要大会が終了しており、試合の撮影はAIGオープンと全日本選手権にとどまった。 次年度からは、さらなる試合撮影とソフトの完成を目指し、その後、試合分析のデータと調整力の関連要因を結び付けていく方向で研究を進めていく。
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