本研究は、元アスリートは、1)どのような出来事を転機として挙げるのか(転機のカテゴリー化)、2)いくつの転機を有するのか(転機の多少は何に起因するのか)、3)ひとつの転機をどのように捉えているのか(出来事をポジティブに捉える要因、ネガティブに捉える要因とは)、4)転機を転機として認める個人内基準とは何か、といったリサーチ・クエスチョンの下、3年間継続して実施される。 1年目(平成16年度)は、研究課題として、インタビュー調査の実施と「自己物語」の作成・検討を設定し、具体的には、1)インタビュー・マニュアルの作成、2)集中的なインタビュー調査の実施、3)自己物語の集積と質的分析 2年目(平成17年度)は、以下の下位課題の解決を試みた。 1)インタビュー調査の継続実施 モントリオールオリンピック大会に出場した日本代表選手を対象として、集中的なインタビュー調査を実施した。特に、全国各地に散在するインフォーマントをそれぞれ個別に訪問し、インタビューを行うことは膨大な時間と労力を要する。今後も必要に応じて継続していく予定である。 2)研究成果の一部公開 日本体育学会第56回大会(於:筑波大学)において、研究成果の一部を公開した。特に、大会本部が企画したオーガナイズドセッションにおいて、心理学領域のみならず、社会学や体力学、人類学等のプレゼンテーションと伴に、「スポーツ科学領域における事例研究の展開」といった共通のテーマ設定の中、ディスカッションできたことは意味深い。そこでの学究的刺激は、本研究の今後の展望について新たな知見の発掘を促した。
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