研究課題
Wistar系雄性ラットの海馬スライス標本を用い、神経活動に対する高温の影響を細胞内記録法により検討した。(1)標本灌流液を36℃に維持し、CA1ニューロンの静止膜電位(-68.7±1.5mV)が安定した後40℃に12分間上昇させると、膜抵抗の減少を伴う過分極電位(3.6±0.5mV)が5〜8分以内に発生した。同時に記録したSchaffer側枝の電気刺激に誘発される興奮性シナプス後電位(EPSP)は、温度上昇により速やかに抑制され5分後には安定した(抑制率40%)。(2)32℃に維持した灌流液中にアデノシンを投与すると、CA1ニューロンに過分極電位が発生し、シナプス前性に興奮性アミノ酸の放出が抑制されてEPSPが減少した。これらの反応はアデノシンA_1受容体(A_1)を介していた。(3)A_1拮抗薬DPCPX(1μM)を溶解させた灌流液中では、36℃から40℃へ上昇させた時の速やかなEPSPの抑制は阻害された。また、アデノシン(10μM)存在下では36℃から40℃へ上昇させた時のEPSPの抑制は軽減した。(4)DPCPX、アデノシンいずれの存在下でも、灌流液温を36℃から40℃へ上昇させると、対照液中と同様に膜抵抗の減少を伴う過分極電位が発生した。(5)対照液中で40℃を持続させると20分以降にEPSPの増大、50分以降に不可逆性の急峻な脱分極が起こった。以上より温度上昇時には、(1)内因性アデノシンが非常に早期から増加しA_1を介して興奮性アミノ酸の放出を抑制すること、(2)過分極電位の発生にはA_1以外の要因が関与することが示唆された。A_1の活性化は主に神経保護的な意義があると考えられている。高温が続くとアデノシンA_2受容体(A_2)の活性化や他の機構により細胞の興奮性促進、破綻をもたらす可能性もある。今後、A_2の関与やA_1アゴニストによるさらなる神経保護効果を検討したい。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
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