研究課題
骨格筋のAMP-kinaseを特異的に不活性化するために、dominant negative型蛋白質過剰発現マウスを作製したところ、骨格筋特異的にAMP-kinaseのα1およびα2サブユニットの活性低下を認めた。運動負荷によるGLUT4、PGC-1α発現亢進へのAMP-kinaseドミナントネガティブ効果を調べた。その結果、長期間のスイミング運動後のGLUT4 mRNAとPGC-1α蛋白発現量はAMPK-DNマウスでも野生型と同様に増加した。AMPK活性化剤であるAICARを用いた実験結果から、AMPKの恒常的な活性化が"運動療法"を模する作用点である可能性が示唆されていたが、今回の検討では、継続的な運動によるGLUT4やミトコンドリア数の増加は骨格筋のAMPK活性化では説明できなかった。筋肉組織特異的にPGC-1αを過剰発現させたマウスの表現型の変化を調べた。16週齢マウス骨格筋の凍結切片を組織化学的に検討したところ、筋線維径の大小不同、ミトコンドリア量の著明な増加を認め、それに伴いcytochrome c oxidaseおよびsuccinate dehydrogenase活性の著しい亢進を認めた。電子顕微鏡で観察すると、ミトコンドリア量とz線の厚さが増加し赤筋化を示す所見を得たが、その他の形態学的な異常は認めなかった。Gene Chipを用いて遺伝子発現変化の網羅的な解析を行ったところ、脂肪酸のβ酸化系の酵素や、TCAサイクル、電子伝達系の遺伝子の発現量は著明に増加していた。また、PGC-1αマウスは自発運動量が少ないのにもかかわらずエネルギー消費量が上昇していた。PGC-1αマウスに高脂肪食負荷を行ったところ、体重増加の抑制、体脂肪量の減少が認められた。しかし、筋肉量の減少を伴う除脂肪体重の減少が認められた。PGC-1αマウスの抗肥満効果は大きく、また高脂肪食負荷による筋肉のインスリン情報伝達障害(PI3キナーゼ活性を指標)も改善されていたが、耐糖能やインスリン抵抗性の改善は軽微なものであった。PGC-1αマウスを25週齢まで飼育すると、筋線維の著しい萎縮と脂肪組織の浸潤を認めた。電子顕微鏡で観察すると、ミトコンドリア量の著しい増加と筋原線維の崩壊、さらに多くの自己貪食空胞を認めた。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
Biochem.Biophys.Res.Commun 325
ページ: 812-818
J Biol Chem. 279
ページ: 41114-41123