肥満症はインスリン抵抗性、耐糖能異常などの代謝異常を合併し動脈硬化を進展させる。また、耐糖能異常において加速的に形成される終末糖化産物(AGE)は動脈硬化を惹起する危険因子である。本研究は、AGEのインスリン抵抗性に対する作用を解明することを目的として、脂肪細胞のグルコース(Glu)取り込みに対するAGEの作用を検討した。分化誘導した3T3-L1脂肪細胞にGlu由来AGE(Glu-AGE)を添加し細胞内へのGlu取り込み量を測定したところ、Glu取り込み量はGlu-AGEの濃度依存的に減少した。新規AGE構造体であるグリセルアルデヒド由来AGE(Glycer-AGE)、グリコールアルデヒド由来AGE(Glycol-AGE)について検討した結果、いずれのAGEもGlu取り込み量を抑制し、その抑制の程度はGlu-AGE<Glycer-AGE<Glycol-AGEであった。また、各種AGEを添加した際の3T3-L1脂肪細胞内におけるフリーラジカル量を測定したところ、Glu-AGE<Glycer-AGE<Glycol-AGEの順にフリーラジカル量が増加しており、Glu取り込み抑制の程度と相関していた。AGEによる脂肪細胞へのGlu取り込み抑制効果、ならびにフリーラジカルの産生亢進作用は、抗AGE抗体ならびに抗AGE受容体(RAGE)抗体の添加により消失した。AGEは脂肪細胞上のRAGEを介して脂肪細胞内への糖取り込み能を低下させることから、AGE-RAGE系は脂肪細胞におけるフリーラジカルの産生亢進を介してインスリン抵抗性を増悪させる可能性が示唆された。
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