本研究は、柑橘系フラボノイドであるヘスペリジンによる骨代謝制御とメバロン酸経路などとの関連を現象面および分子レベルで解析することにより、その骨代謝調節機序を推定することを目的としている。実験1:卵巣摘出(OVX)および実験2:精巣摘出(ORX)マウスにヘスペリジンを添加した飼料で4週間摂取させた。また、ヘスペリジンのアグリコンであるヘスペレチンが骨細胞に直接作用し、骨代謝調節因子を調節するかを確認するため、MC3T3E-E1細胞にヘスペレチンなどを添加し培養後、RT-PCR法によりmRNAレベルを調べている。 実験1:子宮重量はヘスペリジン摂取による影響は認められなかった。大腿骨BMDはOVXにより低下したが、ヘスペリジン投与によりSham群レベルまで回復し、Ca含量も同様な結果が得られた。大腿骨形態計測はヘスペリジン投与によりSham群レベルまで改善された。血清および肝臓中TC濃度はヘスペリジン投与により有意に低下した。実験2:精巣嚢重量はヘスペリジン投与による影響はみられず、大腿骨BMDは改善した。大腿骨Ca含量はヘスペリジン投与によりShamおよびORX群に比し有意に高値を示した。骨吸収マーカーである血中I型コラーゲンC末端テロペプチドはORXにより増加したが、ヘスペリジン摂取によりその増加が抑制された。血清中TCおよびTG濃度はORXにより上昇したが、ヘスペリジン投与により有意に低下した。これらの結果より、OVXマウス、ORXマウスとも、にヘスペリジン投与によって骨量減少抑制効果を示し、ヘスペリジンの骨粗鬆症予防効果が示唆された。現在、MC3T3E-E1細胞へのヘスペリチン添加実験を行い、濃度段階で骨細胞への影響を確認中である。さらに、摘出した大腿骨由来の骨修飾因子(BMP2)、破骨細胞分化誘導因子(RANKL)の発現量をRT-PCRにてmRNA量を解析している。
|