本研究は、動脈硬化の中心的なメカニズムと考えられる酸化ストレスに対する細胞応答と運動との関連について検討することを目的としている。すなわち、動物実験において運動が血管の炎症性メディエーターに及ぼす作用機序について検討する。さらに、動物実験で得られた結果をもとに、血管内皮細胞における酸化ストレスに対する細胞応答を遺伝子レベルで明らかにすることを目的としている。平成16年度はこ特に運動による酸化ストレスが動脈組織と血管の炎症性メディエーターに及ぼす作用機序について検討した。すなわち、高血糖は動脈硬化促進性遺伝子の発現を誘導させるとともに、生体内に発生した活性酸素を消去するための酵素的な防御機構活性を低下させることが知られている。また過度の運動は活性酸素を産生して酸化障害を引き起こすことから、高血糖時の運動は生体内の活性酸素生成を増加させる可能性がある。そこで、ストレプトゾトシン投与により誘導した糖尿病モデルラットにおける運動が生体組織、特に動脈組織の酸化ストレスに及ぼす影響について検討し、さらに抗酸化性物質であるビタミンEとの相互作用について合わせて検討した。その結果、心臓組織中のチオバルビツール酸反応生成物質量は、運動を負荷しない安静群に比べ急性運動負荷群において有意な高値を示したが、動脈組織中のチオバルビツール酸反応生成物質量に有意な変動は認められなかった。また、ビタミンE摂取により血清中のMonocyte chemoattractant protein-1産出量は抑制されるが、運動負荷時においては、ビタミンEを摂取しても血清中のMonocyte chemoattractant protein-1産出量に影響を及ぼさないことが明らかとなった。
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