研究概要 |
<目的>本研究は、生活習慣病を予防するための運動のあり方を評価するに当たり、特に運動が血管内皮における酸化ストレスによる遺伝子の発現調節機構に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。酸化ストレスは生体内において、活性酸素種発生系とその消去系の均衡が崩れたときに生じる。血管細胞における酸化ストレスは、活性酸素種の発生源としてNADH/NADPHオキシダーゼの重要性に注目が集まっている。今年度はアンジオテンシンIIを投与して酸化障害を惹起させ、運動の酸化抑制能力について検討した。<方法>実験には3週齢のSprague-Dawley系雄性ラットを用いた。1週間の予備飼育後、運動を負荷しない安静対照群(CON群、n=10),自発走運動を行わせる自発走運動群(SWR群、n=10)群に分けて3週間飼育した後、CON群とSWR群のうち5匹ずつに浸透圧ポンプ(Alza Pharmaceutics, USA)によりアンジオテンシンII(ANGII、0.7mg/kg/day)を投与し、さらに1週間飼育した。4週間の飼育期間終了後、12時間以上の絶食をさせた後、ジエチルエーテル麻酔下で屠殺し、大動脈起始部から腸骨動脈までの動脈組織中の過酸化脂質量(Cayman Chemical、USA)を測定した。<結果と考察>運動を負荷しない安静対照群の動脈組織中LPO量は、CON群に比べANGIIを投与した群で上昇したが、有意な変動は認められなかった。自発走運動群ではLPO量に有意な差は認められなかった。また、安静対照群と自発走運動群で比較しても有意な変化は認められなかった。このことから、自発性運動は生体内の酸化ストレスの抑制に影響を及ぼさない可能性が示された。
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