本研究は、「家庭空間における情報テクノロジーの導入・受容プロセス」の解明を目的として実施される調査研究であり、二年目となる本年度は以下の調査活動を実施した。 まず、昨年度実施した質問紙調査の分析であり、特に家庭におけるパソコンの所有状況・設置場所についての分析から興味深い知見、すなわち、パソコンの所有形態としては家族共用が多数派であり、また設置場所としても個室よりも家族の共有スペース(居間など)に置かれることが多いという知見が得られた。また、その他の知見も含めて、調査結果の概要を報告書にまとめ、質問紙協力者(希望者のみ)に郵送で配布した。 第二には、インタビュー調査の継続である。当初は、昨年に引き続き30〜50代の夫婦を主要なインフォマントと設定し、主にリビングルーム的な状況における、パソコン、インターネット、携帯電話の利用状況を探ることとなった。その後、そうした状況については、一定の知見が蓄積されたと判断し、インフォマントを20代前半の若年層に求め、むしろ個室的状況における若者のインターネット利用に焦点を当てた。その結果、個室のインターネット利用者はヘビーユーザーになりやすい傾向があることが明らかになった。 こうした知見を受けて、最後に、家庭の情報環境のリデザインの試みとして、個室のヘビーユーザーを念頭に置いたウェブ・ツールを開発した。これはインターネットのヘビーユーザーの「孤独感」の緩和に関わるものであり、10名程度のコミュニティの内部で、各メンバーのURL履歴をリアルタイムで共有するものである。具体的にはこれを、PHPによるプログラムと専用サーバ、既成のRSSリーダーの組み合わせにより実装し、ユーザーへのインタビューを行った。その結果、孤独感の緩和のみならず、ウェブ情報の集合的享受によるコミュニティ内での情報共有にも一定の効果が得られることが明らかになった。
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