研究課題
必須脂肪酸であるリノール酸(18:2n-6、n-6系列)とα-リノレン酸(18:3n-3、n-3系列)の2つの系列は相互変換されず、生体内では競合拮抗的に代謝されて生体膜の構成成分となる。このため、その生体内レベルは食事の必須脂肪酸バランス(リノール酸/α-リノレン酸、n-6/n-3)を反映したものになる。これらの必須脂肪酸バランスの異なった油脂を添加した無脂肪精製飼料を長期に渡って与え、ラットの摂食行動を比較した。レバーを押せばペッレット(餌)が出る装置を備えたスキナー箱にラットを入れ、ラットがレバーを押した回数をコンピューターで自動計測したところ、レバーを押せばペレットを獲得できることを習得するのに要した時間(Shaping time)は、高α-リノレン酸食群と比較して高リノール酸食群で有意に短かった。また、ラットがレバーを押せばペレットを獲得できることを習得した後、ペッレットを40個獲得するのに要した時間(Acquisition time)についても同様に、高α-リノレン酸食群と比較して高リノール酸食群で有意に短かった。以上より、高リノール酸食では摂食行動が促進されている一方で、高α-リノレン酸食では摂食行動が抑制されていることが明らかとなった。これらの結果は、食事必須脂肪酸バランスが食欲に大きく影響することを示している。2つの系列の必須脂肪酸からは生理活性の異なった脂質性メディエータが生合成される。このような脂質性メディエータの産生に食事必須脂肪酸バランスがどのように影響し、さらに摂食行動・食欲とどのように関連しているのかを今後解析していく必要がある。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
Journal of Nutritional Biochemistry 15
ページ: 273-280