研究概要 |
味噌汁は日本型食生活の代表的な汁物であり,「だし」は日本人の食事に欠かせないものである。だしの素材としてさまざまな食材が用いられるが,山口県は古くから煮干しの生産が盛んであるため,煮干し(いりこ)だしが主流である。本研究者が平成16年度に行った調査によると山口県内の85%の小学校で,味噌汁だしの材料に煮干しが使用されていることがわかった。しかしながら,家庭ではインスタントだしの利用が増加していることが予想される。 そこで,健全な味覚の発達を目指した官能検査と味覚に関する食教育を行うことを目的とし,平成17年度は次のような取り組みを行った。 1)小学生およびその保護者を対象とした嗜好調査の実施 山口県内の小学校3校の小学生5・6年を対象に,「煮干しだし」と「インスタントだし」の官能評価を行い,味の好みや感じ方について嗜好調査を行った。学校給食で用いられる「だし」の素材については学校栄養職員が講義を行い,家庭科での授業や学校の行事と連動した取り組みを行った。保護者についても同様の官能評価を行ったところ,親子間の「だし」の好みに関連は見られなかったが,保護者が家庭で用いる「だし」の種類は,過去の習慣に影響を受けることがわかった。 2)成果発表 平成16年度に大学生を対象に,だし汁の官能評価の予備調査を実施したところ,過去に食した「だし」が現在の嗜好、および用いる「だし」素材の種類に影響を与えることが認められた。その成果を南アフリカ(ダーバン)で行われた国際栄養会議(9/18〜25)にて発表した。 3)今後の取り組みとして,平成18年度は対象者と調査地域を広げ,日本型食生活の基盤である「だし」を用いた味覚教育を実施する。また,これまでの研究成果を学会誌へ投稿する。
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