研究概要 |
本年度は,食教育の観点からみた食物選択と食物嗜好との関連に関する発達心理学的研究における第1年目(後半)として,以下のような2つの基礎的研究を実施した(研究代表者は,本研究の初年度である平成16年11月より1年間産休・育休を取得したため,本報告は,平成17年11月から3月までに実施した内容である). 第1は,食物選択と食物嗜好との関連についての調査対象者のうち,大学生を対象として,食物選択,食物嗜好と抑制的摂食,情動的摂食,外発的摂食に関する3つの食行動,肥満との関連について分析を実施した.その結果,男性は肥満の程度が高いほど野菜が中心の副菜の選択数が少ないが,栄養所要量と食物好悪には特徴がみられないこと,抑制的摂食は主菜の選択数が少なくそれに関係するタンパク質等の所要量が少ないことが示唆された.一方,女性は肥満と食物選択,食物好悪との間に関連はみられなかったが,外発的摂食は脂肪,糖質を多く含む料理を選択し,肥満につながりやすい料理を好むこと,抑制的摂食は選択数には特徴がないが,肥満につながりやすい料理を選択することが少なく,健康的なおやつを好むことが推察できる. 第2は,食教育をおこなっていく上での基礎的資料として,子どもをもつ親がどのような食生活を営み,どのような食事観をもっているか,またそれらの背景として親の家事労働の時間等の変遷について,これまでに実施された大規模な調査を分析した.その結果,仕事をもつ夫婦の家事関連時間は,10年前よりは若干夫の分担が増えているものの,まだまだ妻の負担が大きいこと,家族の食卓には,年代を問わず中食の利用が増え,食が外部化されていること,家族が食卓を共にして同じメニューを食べるということが減ってきて,個食化が進んでおり,これを親は個人の尊重ととらえていること等が明らかになった.
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